モダン・ジャズ入門中

三十路も半ばを過ぎてモダン・ジャズにハマりました。

非ジャズ・ファンのジャズ遍歴(1) 小学~中学時代

モダン・ジャズにハマったのは30代も半ばを過ぎてからなのだが、それ以前は全くジャズを聴いていなかったか――というとそうでもない。ロックとポップスが圧倒的中心とは言え、音楽には幅広く関心を持っていたから、たまにはジャズと邂逅することもあった。

というわけで、ここではその辺りのゆる~い遍歴を辿ってみたい。

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実は小学1年生の記憶の中に、ジャズがある。

給食の時間中に校内放送で音楽が流れていたのだが、始めの曲はいつも同じで、そのイントロが大好きだったのだけれど、その曲はGlenn Millerの「In the Mood」だったのだ。大げさに言えば、音楽というものが人生に印象づけられた最も初めのものの1つが「In the Mood」だった、ということになる。あのイントロには、いま聴いてもワクワクさせられる。

小学時代には、それ以外にジャズの記憶はない。もちろんテレビやら何やらで接してはいたはずだが、「In the Mood」のように強い印象を残す経験はなかった。家でもジャズは流れていなかった。

 

中学校では吹奏楽部に入部したので、『ルパン三世』のテーマとか、それこそGlenn Millerの曲とか、ジャズの曲も色々と演奏した。アニメ『カウボーイ・ビバップ』のテーマ曲「Tank!」も大好きだったし、ブラス・サウンドに急速に親しんだ時期だった。

初めてジャズのCDを手に入れて聴いたのもそのころ、中学の1年か2年の時で、記念すべき最初の1枚は図書館で借りたMiles Davis『Cookin’』だった。これを選んだのには理由があって、好きな作家である村上春樹がエッセイでMilesについて書いていて、かつ「まるっきりの独断でいいますが、いちばんかっこいいジャズのLP(CD)は、なんといっても、Miles Davisの"WALKIN"(Prestige)です。頭から尻尾までかっこいいです。僕は今でも、"WALKIN"という字を見ただけで、かすかな興奮を覚えます」とも述べていたからである(『そうだ、村上さんに聞いてみよう』32頁)。それでその『Walkin’』を聴いてみようと思ったのだが、図書館にはなかったので、似たタイトルである『Cookin’』にしたわけだ。

一般には冒頭の「My Funny Valentine」が最もよく愛聴されていると思うけれど、当時の私が気に入ったのは「Airegin」だった。ロック少年なのでカッコイイものに反応したのだろう(今も同じようなものだけど)。曲名は「Nigeria」を逆から綴ったものだとライナーノーツで読んで「へぇ~」と思った記憶がある。

これによってジャズに開眼する……ということは特になかったと思うけれど、同じ時期にハード・ロックにハマったこともあり、器楽的な音楽への関心は高まっていたのか、このころにいくつかのジャズのアルバムを同じく図書館で借りて聴いた。ある程度繰り返し聴いたものとしては、Wes Montgomery『A Day in the Life』とCharles Mingus『直立猿人』がある。

『A Day in the Life』は大好きなThe Beatlesの曲を演奏しているから選んだのだと分かるけれど、『直立猿人』を聴こうと思ったのはどうしてだろう。明らかに普通じゃないタイトルだから気になったのかも知れない。タイトル曲は刺激的で当時から好きだった(今でも大好きだ)。『A Day in the Life』は今になって聴き直すと(Wes自身のプレイは別として)アレンジとしては「ジャズ感」が希薄だと感じるけれど、もちろん当時はそんなことは気にせずに聴いていた。「Willow Weep for Me」を知ったのはこのアルバムでである。

いま思い出したけど、Wes Montgomeryを選んだ理由としては、中学2年の時にエレキギターを始めて、ギター音楽に興味を持ったせいもあるかも知れない(そう言えば、教則本のうしろに付いていたギタリスト紹介に、ロックのギタリストと並んでWesも紹介されていたはずだ)。その流れでフュージョンにも興味を持って、いくつか聴いたと思う。覚えている中では、Larry CarltonとLee Ritenourの『Larry & Lee』をこれまた図書館で借りて聴いたものだった(今も時々聴く)。

 

同じころだったか、それとも少し後(高校に入ってから)だったか記憶が定かでないけれど、家にあるレコードの中から、母所有のジャズのレコードを引っ張り出して聴きもした。覚えているのはArt Blakey& the Jazz MessengersMoanin’』とSonny Rollins『Night at the Village Vanguard』で、『Moanin’』は大好きになったけれど『Night at ~』は全然ピンと来なかった。

あと、さっき書いたように中学では吹奏楽部に所属していて、担当楽器はチューバだったので、(一体何で知ったのか)Ray Draperの『Featuring John Coltrane』を中学生か高校生の時に買った(普通のCD屋には売っていないと思うから、通販で買ったのだろうか)。人生で数枚目のジャズのアルバムがRay Draperってかなりのもんだね、とは言うものの全然ピンと来なかったようで内容の記憶はない。いま聴き直したらどうなのだろう。

 

(つづく)