モダン・ジャズ入門中

三十路も半ばを過ぎてモダン・ジャズにハマりました。

橋の上

Sonny Rollinsが1960年前後にシーンから姿を消していた際、橋で練習にいそしんだというのは有名な話。私も、ジャズにハマる前から聞き覚えがあった。

――で、先日、それが橋の「上」だったと知って、結構びっくりした。私はてっきり橋の「下」で練習していたのだと思っていたのである。

日本だと、橋桁のふもとで楽器を練習するというのは今でも割とよく見られる風景だと思うが、あれをイメージしていたわけである。

それが橋の上となると……それは、私の感覚では「練習」ではなくて「パフォーマンス」である。

当初はブルックリン・ブリッジで練習していたのである。しかし、ここは橋を渡る通行人も多く、練習に集中できなかった。そこでウィリアムズバーグ・ブリッジに移動することにした。こちらは橋の距離が長いこととマンハッタン側の出口が不便な場所にあったことから歩行者が少なく、練習には最適な場所だった。しかししばらくすると、橋の上でサックスを吹いているロリンズの写真がダウンビート誌に掲載されてしまう。それでロリンズは再び注目を集め、今度はめったにひとの来ないニュージャージーの公園に練習場所を移したという。

小川隆夫『おもしろジャズ事典』142頁)

……うん、そりゃそうなるよねぇという感じ。

で、1962年、満を持しての復帰作のタイトルがご存じ『The Bridge』。定冠詞のthe、「“あの” 橋」と来たもんだ。うーん、ちょっとこれは出来すぎというか、ある種の「ヤラせ」なんじゃないかと感じてしまう。いや、Rollinsは好きなんですが。

ちなみにこの『The Bridge』、個人的にはいまひとつピンと来ないんですが、A面1曲目の「Without a Song」は結構好きです。