モダン・ジャズの女性奏者たち【工事中】
モダン・ジャズの「名盤ランキング」みたいなのを見ていると、プレイヤーに女性が全っ然出てこないので何とも言えず居心地悪い気持ちになることがある。一例として、『スイングジャーナル』2001年1月号掲載の「21世紀に残したい読者が選ぶ名盤ベスト100」を見ると、アルバム100作の中で、リーダーが女性のアルバムは(ヴォーカルを除くと)1作もない。たぶん、リーダー以外のプレイヤーとしても女性はほとんど(全く?)含まれていなんじゃないだろうか。現代の日本だと女性のジャズ・プレイヤーは簡単に挙げることができるので意外な感じがするけれど、他のランキングでも状況はほぼ同じかと思う。
そこで気になって「モダンジャズ 女性 プレイヤー」とかで検索してみても、日本語のサイトではヴォーカル関係の記事ばかりがヒットして、私が知りたい「1950年代あたりの、モダン・ジャズの女性楽器奏者」をまとめてくれている記事は見当たらない。
一方、英語で "jazz female instrumentalists"などと検索してみると、いくらかは目当ての内容の記事がヒットする。そうした記事などを頼りに、ぽつぽつと女性プレイヤーのリストを作って作品を聴いていっているところである。
というわけで本記事では、同じような考えを持つ人のために、「1950年代にリーダー作を出している」ということをおおよその基準にして、女性ジャズ奏者のリストを示そうと思う。本当なら1人ずつ紹介文を添えたいところだけれど、それをしだすといつまで経っても公開できなそうなので、とりあえずはどんどん名前を列挙していきます(順番はおおむね生年順)。
Mary Lou Williams メアリー・ルー・ウィリアムス [1910-1981]
ピアニスト、かつ作曲家・編曲家。大西順子曰く「私たち、女子ジャズからすると教祖みたいな人」*1。
Marian McPartland マリアン・マクパートランド [1918-2013]
ピアニスト、イギリス出身。モダン・ジャズの白人女性ピアニストとしては、ユタ・ヒップに次いで有名な人じゃあるまいか。『At the Hickory House』(1955年リリース)はトリオ主体ながらチェロやハープも導入した面白い作品。
Hazel Scott ヘイゼル・スコット [1920-1981]
ピアニスト。クラシックの分野でも活動していたとのこと。日本では作品よりも、Art Blakey and the Jazz Messengers『Au Club Saint-German (サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ)』所収の「Moanin’ with Hazel」で有名かも。
Mary Osborne メアリー・オズボーン [1921-1992]
ギタリスト。リーダー作『A Girl and Her Guitar』(1960年リリース)はオーヴァー・ドライヴ気味のギター・プレイがカッチョイイ。
Roy Kral ロイ・クラール [1921-2002]
ボーカル・デュオ Jackie and Royで知られる人ですが、ピアノも弾くとのことなので一応リスト入り。
Dorothy Donegan ドロシー・ドネガン [1922-1998]
ピアニスト。クラシック仕込みの、ゴージャスなプレイ。60年代には『The Ed Sullivan Show』にも出演しています。めちゃ上手。
後年には、あの『Sesami Street』にも出演(1995年、エピソード3383)。YouTubeで動画が見られますが、めちゃめちゃカッコイイです。
50年代の作品としては、『September Song』(1956年リリース)・『At the Embers』(1957年リリース)等。長く活動した人なので、70年代や80年代のライブ盤なんかも良さそうです。
Beryl Booker ベリル・ブッカー [1922-1978]
ピアニスト。
Barbara Carroll バーバラ・キャロル [1925-2017]
ピアニスト、かつボーカリスト。
Adelaide Robbins アデレード・ロビンズ [ - ]
謎のピアニスト。Marian McPartland、Barbara Carrollとの連名で『Looking for a Boy』(1957年リリース)というアルバムを出しているが、他の情報が見当たらない(Discogsにもこのレコードのみ)。
Jutta Hipp ユタ・ヒップ [1925-2003]
ピアニスト、ドイツ出身。かのBlue Note 1500番台に3枚のアルバムを残しているので、モダン・ジャズの女性プレイヤーとしては最もよく知られている人だろう。
Clora Bryant クローラ・ブライアント [1927-2019]
トランペッター。1940年代にInternational Sweethearts of Rhythmという女性だけで構成されたビッグバンドがあり、彼女はそのメンバーだったそうです。歌いつつトランペットも吹くというスタイルで、リーダー作『Gal With A Horn』(1957年リリース)を残している。
Melba Liston メルバ・リストン [1926-1999]
トロンボーン奏者、編曲家等。リーダー作『Melba Liston and Her 'Bones』(1960年リリース)。
Lorrain Geller ロレイン・ゲラー [1928-1958]
ピアニスト。リーダー作としては『At the Piano』(没後の1959年リリース)、及び夫であるHerb Gellerとの共作である『The Gellers』(1955年リリース)がある。『At the Piano』はちょっと変わった雰囲気で面白い。あと個人的にはRed Mitchell『Presenting Red Mitchell』(1959年リリース)での演奏が、録音も良くておすすめ。
Vi Redd ヴァイ・レッド [1928-2022]
アルト・サックス奏者、かつボーカリスト。両方をフィーチャーした初期のリーダー作が『Bird Call』(1962年リリース)。
Muriel Roberts ミュリエル・ロバーツ [1929-2014*2]
ピアニスト。リーダー作『Flower Drum Song』(1959年リリース)、『Music for All Times & Seasons』(1965年リリース)。
Toshiko Akiyoshi 穐吉敏子 [1929- ]
言わずもがなのピアニスト、作曲家。
Joyce Collins ジョイス・コリンズ [1930-2010]
ピアニスト。リーダー作『Girl Here Plays Mean Piano』(1960年リリース)。
Terry Pollard テリー・ポラード [1931-2009]
ピアニスト、ヴィブラフォン奏者。リーダー作『Terry Pollard』(1955年リリース)。ピアノ・トリオを主体としつつホーンやギターも入ったバラエティー豊かな1枚。
また、本ページの趣旨からして見過ごせないのが『Cats vs. Chicks - A Jazz Battle Of The Sexes』(1954年?リリース)。タイトルからも察せられるように男性バンドと女性バンドのバトルという趣のアルバムで(両者とも同じ曲を採り上げている)、その女性バンドの方のリーダーがこのTerry Pollard。そしてバンドメンバーは(当然ながら)全員女性で、Beryl Booker(ピアノ)、Norma Carson(トランペット)、Corky Hecht(ハープ)、Mary Osborne(ギター)、Elaine Leighton(ドラム)、Bonnie Wetzel(ベース)という面子。
Dorothy Ashby ドロシー・アシュビー [1932-1986]
ジャズ・ハープ奏者には女性が結構いたみたいだ。その中で断トツで有名なのが彼女ではないかと思います。『Soft Winds』(1961年リリース)はハープ、ヴィブラフォン、ベース、ドラムのカルテット編成だが、ヴィブラフォンはTerry Pollardが演奏していますので、女性2:男性2という理想的?な男女比の構成となっている。
あと珍しいところで、Stevie Wonderの作品に参加しています。代表作の1つ『Songs in the Key of Life』(1976年)に収録の「If It’s Magic」……伴奏はハープだけ、そのハープがDorothy Ashbyだそう。
Shirley Scott シャーリー・スコット [1934-2002]
オルガン奏者、作曲家、編曲家。ソウルフルなスタイルで知られる。単独リーダー作に加え、配偶者だったStanley Turrentineといくつかのリーダー作を残している。
Pat Moran パット・モラン [1934- ]
ピアニスト。リーダー作『This is Pat Moran』(1958年リリース)。
Alice Coltrane アリス・コルトレーン [1937-2007]
ピアニスト、ハーピスト等。John Coltrane『Live at the Village Vanguard Again!』(1966年リリース)への参加が有名か(ジャケットにも写っているし)。60年代後半からリーダー作あり。