Red Mitchell『Presenting Red Mitchell』
A1. Scrapple from the Apple (Charlie Parker) [5:27]
A2. Rainy Night (Red Mitchell) [5:20]
A3. I Thought of You (Red Mitchell) [5:17]
A4. Out of the Blue (Miles Davis) [6:15]
B1. Paul's Pal (Sonny Rollins) [6:55]
B2. Sandu (Clifford Brown) [5:31]
B3. Cheek to Cheek (Irving Berlin) [8:06]
Red Mitchell – bass
James Clay - tenor saxophone, flute
Lorraine Geller – piano
Billy Higgins - drums
録音:1957.3.26 発売:1957
レーベル-No.:Contemporary - C3538
総評
・ジャケ良し、録音ヨシ、演奏ヨシ。楽曲にもうちょっとコクがあればなあという感じもするんですが、言い換えれば「あっさりさ」が個性の1枚とも言えそうです。ウェスト・コーストらしいというんでしょうか。ベース・ソロが多い(=全体の音量が大きくならない)のと、ワン・ホーンなんですが半分はフルートなので、ガツンと来ない。ある程度の密度と軽快さのあるものが聴きたいけれどガツンとは来てほしくない、という時にしっくり来るアルバムと言えそうです。
・「あ、ピアニストは女性なんだ」「そう言えばジャズ・ミュージシャンに女性って全然見かけないな」ということで、モダン・ジャズの中の女性プレイヤーに意識を向けるきっかけになったアルバムです。
楽曲
・ベーシストがリーダーのアルバムということでやっぱりベース・ソロが多めですね。全曲に割と長めのソロがあるんじゃないかな。バッキングが充分優れているので、ソロはもっと少なめで良かったかなと個人的には感じる。
・ただ、ベース多めということが先述の「ガツンと来ない」ムードを作ってもいるので、長所とも言えそうです。
・A2とA3がRed Mitchellのオリジナルだそうですが、どちらもいい味を出していると思う。A2「Rainy Night」は、イントロでフルートとベースの高音部が絡むのが面白い。A3「I Thought of You」は、最初と最後でフルートとピアノがピロピロ……と重なるのが、ちょっと東洋的で面白い。
演奏
・Red Mitchellのベースの巧みさが充分伝わる。B3「Cheek to Cheek」での、速いテンポでの4ビートの安定感なんか素晴らしい。ソロも、ベース・ソロは総じて苦手なんですが、本作のソロは結構聴けるなという感じがします。
・Lorraine Gellerのピアノは、A3「I Thought of You」情感たっぷりのピアノ・ソロが、こりゃもう「完璧」と呼んで良いんじゃないかと思うほどの素晴らしい出来映え。どの部分を取ってもイイのだが、殊に2:14で軽く "ポーン" と弾く高音のドの音、これがもう最高! あまりに良いので、そのあとのフルート・ソロの間もベース・ソロの間も伴奏のピアノを聴いてしまうほど。
・James Clayのサックスも好みです。フルートと半分ずつ分担しているのが、いいバリエーションを生んでいると思います。
・Billy Higginsのドラムもいい。ハイハットの刻みなんか、聴いていて非常に気持ちいい。録音が良くてよかった、と思える。
録音
・音、良いです。とても50年代とは思えない。「90年代です」と言われたら信じてしまうと思う。サックスはちょっとマイク近すぎるんじゃないかとも思うけど。ベースとドラムの音がクリアなのが嬉しいし、あとLorraine Gellerのピアノが綺麗な音で録れているのが有難い。
ジャケット
・やや野暮ったいながらも、名ジャケ。猫が写っているというだけでなくって、いっちょまえにベースを弾こうとしているように見える点がポイント高いです。背景の、影がくっきり映った壁も良い感じ。
聴いたきっかけ
・これはジャケ買いならぬジャケ聴きです。『ジャズのすゝめ』というムックにこのレコードが出ていて、「内容はともかく猫ジャケとして秀逸」みたいなことが書いてあって、聴いてみたら内容もイイじゃん、という。
この曲・この面
・曲は、やっぱりGellerのソロが大好きなA3「I Thought of You」、これに尽きます。面で言ってもA面の方が好み。
※記事中の画像はDiscogsからの転載です。