モダン・ジャズ入門中

三十路も半ばを過ぎてモダン・ジャズにハマりました。

10インチから再編された12インチLPはなんか嫌

10インチLPから再編された12インチLPというのがありますね。有名なところだと、Miles Davisの『Bags’ Groove』とか『Walkin’』とか。あれがなんか嫌だ(個人の感想です)。「オリジナルの形で聴きたい」と思ってしまうのである。

あと複数の作品が混ぜ込まれているせいで録音日やパーソネルがごちゃつくのもなんか気持ち悪い。

ついでに言うと、「Thelonious Monkはトリオ・アルバムとしては『Thelonious Monk Trio』を残しており」みたいな説明も、個人的に結構引っ掛かる。いや、残したのは10インチの『Thelonious』と『Thelonious Monk Plays』であって、『Trio』はそれを利用した編集盤じゃん、と。

というわけで(?)、私は『Thelonious Monk Trio』はオリジナルの10インチ『Thelonious』と『Thelonious Monk Plays』に分けて聴いているし、『Horace Silver and the Jazz Messengers』はオリジナルの10インチ『Horace Silver Quintet (Volume 3)』と『同(Volume 4)』に分けて聴いているし、『Max Roach and Clifford Brown』は12インチに再編される際に加えられた2曲(「The Blues Walk」「What Am I Here For?」)は取り除いて聴いている。こういうのは、まあ性格ですね。

上で挙げた内、『Max Roach and Clifford Brown』では、追加された2曲はA面とB面の末尾にそれぞれ置かれている。これは「ボーナス・トラック」的な扱いが明瞭で、良い対処法だと思う。

これに対して、『Horace Silver and the Jazz Messengers』の場合、A面に『Horace Silver Quintet (Volume 3)』が、B面に『同(Volume 4)』がそれぞれ丸々収められている……のだったら文句なかったのだけど、微妙に曲の入れ替えがあるのですよね。時間配分の都合かと思うんだけど、これはどうもムズムズする。

で、もっと悪いのが『Thelonious Monk Trio』だ。

Thelonious Monk Trio』の嫌なところ

まず、上述のように『Thelonious』と『Thelonious Monk Plays』(以下『Plays』)から再編したとは言っても、実は『Plays』からはB面の2曲(これでB面全曲)しか入れていない。これがまず落ち着かないのだけれど、更に曲の配置がマズい。これはトラックリストを見てもらうのが早いので見てください。○印が元々『Thelonious』A面に入っていた曲、●印が同B面に入っていた曲、@印が『Plays』に入っていた曲である。

 ○A1. Little Rootie Tootie
 ○A2. Sweet and Lovely
 ○A3. Bye-Ya
 ○A4. Monk's Dream
 ●A5. Trinkle Tinkle
 ●A6. These Foolish Things

 @B1. Blue Monk
 @B2. Just a Gigolo
 ●B3. Bemsha Swing
 ●B4. Reflections

あー、ムズムズする! 本棚にマンガが巻数バラバラで並んでいるのを見るような気分になる。

嫌なのは次の2点である。

(1)『Thelonious』B面に入っていた曲が、A面とB面に泣き別れになっている。
(2)『Plays』からの2曲が、『Thelonious』B面曲群に割り込む形で収められている。

でも実はそれだけではない。元々『Thelonious』は、A面とB面でセッション日が違っていて(A面が52年10月、B面が同12月)、A面はArt Blakeyが、B面はMax Roachがそれぞれドラマーを務めている(ベースはどちらもGary Mapp)。つまりA面がBlakey Sideで、B面がRoach Sideだったわけである。整然としているでしょう?

ところがこれに『Plays』(54年9月録音)を混ぜ込むことで、まず1枚のアルバムの中に52年と54年の録音が混在している(しかも、54年の録音が52年の録音の後に置かれるのではなくって、52年のものに挟まれている)し、かつパーソネルもごちゃつくことになった。『Plays』の2曲の内、「Blue Monk」はトリオで、ドラムはまたもArt BlakeyでベースはPercy Heath。もう1曲の「Just a Gigolo」はMonkのソロ。この結果、アルバムのパーソネルを見た時に、ベースはMappなのにB1だけHeathという、実にヘンな感じになってしまっている。

でもこれだって、元々の『Plays』を見れば、全体がMonkとBlakeyとHeathのトリオ、ただしB2のみMonkのソロ、ということで、実にスッキリしたものなのだ。

というわけで、今では私にとって『Thelonious Monk Trio』は「聴かない」アルバムになっている。その代わり『Thelonious』と『Thelonious Monk Plays』というオリジナルの形で聴いているというわけ。これでいいのだ。

 

ところで、では『Trio』に収められなかった『Plays』A面(2曲。「Work」「Nutty」)は、一体どうなったのであろうか? ……実は別の12インチLPに収められたのですね。しかも『Thelonious Monk and Sonny Rollins』っていう……『Plays』にはRollinsは参加してないのに……私には理解できない処置である。

ちなみに、『Trio』のCDにはこの「Work」と「Nutty」がボートラで収められているものがある。つまり、素材としてはオリジナルの『Thelonious』と『Plays』の素材が全て揃っている(ので、並び替えればこの2枚が復元できる)。これはナイス采配である。